【2024年3月×ヒラスズキ②】厳冬期の福岡ヒラスズキを求めて敗北を積み重ねていたら、いきなり春がやって来た・・。

人は、いつも澄んだ気持ちではいられない。

みんな、濁り具合の差こそあれ、心の中を満たしているのは泥水だ。

コンビニで買ったハードタイプのグミを頬張りながら、たった数時間で廃退的に荒んでしまったメンタルのリフレッシュと、何も考えられなくなってしまった思考を再びフル稼働させようと、大きな岩の上に座って、波の砕ける音と広がっては消えていくサラシと海の境界線を眺めながら、そんな言葉が浮き上がっては空気に触れて溶けた。

しばらく、じっと海を眺める。

自分の心は、目の前に広がる近所の地磯に似ているのかもしれないと思った。

透明度の高い近所の地磯は、一度波や風に影響を受けると、荒れてしまってすぐ濁る。

しかし、そんな波風がしばらく継続すれば濁りは沖の彼方へと霧散して、荒れてはいるが透明な海となり、そのまま平然と何もなかったかのように落ち着いてゆく。

もちろん、別方向からの風やウネリによって濁りが長引くこともあるが、基本的にはそのサイクルを維持しながら濁っては澄んでいくことを繰り返し、それが自分の精神状態と重なって一層のこと海に溶けてしまいたくなる。

そんな、澄んだ状態で迎えた厳冬期。

海水温が15度を下回ったあたりから、ヒラスズキからの反応がなくなっていき、やがて一切の反応が途絶した。

連敗を積み重ねていく過程で濁りが増していき、むしろ「濁り」というよりも「汚れ」や「穢れ」に近いのかもしれないが、恨み妬みといった数多の感情が増幅し自分の心がどす黒く変色し、それで満たされた。

場所を変え、アプローチを変え、戦略を変え、それでも敗北の連鎖は変わらず、心の濁りは解消されることはなかったが、連敗が2桁に達したあたりから、心の表面は時化終わりの磯のように荒れているものの澄んできた。

今の僕なら・・。

冷静に、純粋に邪推に囚われずに向き合えるのではないか・・。

今回の釣行記録は、そんな精神状態で迎えた地磯釣行である。

冒頭

未明に数時間ではあるが、大人しめの雨が降った。

これにより、微々たるものかもしれないが水温が下がり、安定を切に願っていた海水温に変化が生じただろう。

ただでさえ、ヒラスズキの適水温を1〜2度ほど下回っているこの状態で、いくら足掻いても何の反応も得られないヒラスズキを狙わないといけないというのに・・。

こんな状況でヒラスズキを釣るには、水温の安定が不可欠なのではないか・・と考察しているところに降り続くこの雨は、例え釣行途中で降り止むとしても、あんまりじゃないか・・と思った。

振り返ると、ここ最近の釣行は雨が多い。

というか、1日のうち、どこかのタイミングで毎日雨が降っている。

「催花雨」という大地に春を告げる雨だということは知っているが、例年こんなに降っていなかったはずだ。

0.1度でも水温が高い状態でヒラスズキにアプローチをしたい僕にとって、この雨は・・今年の催花雨は厄介でしかなかった。

案の定、海況ステータスの参考にしているアプリのデータ上では、寒気が入ってきたことも相まって、こんな感じで水温が2周間ほど前に戻った。

潮汐:中潮(09:15満潮↘14:34干潮)

天気:曇〜晴

気温:8℃

水温:14.1度

風 :北西8m

波高:1.5m

希望なんてものは持ち合わせていない。

そんなものは、先月の磯のどこかで置いてきた。

だからといって、挑戦しない・・という選択肢も持ち合わせていなかった。

やるのみ・・。

希望も絶望も後悔も可能性も期待も、そんな不純物を取り除いた純度の高い挑戦したいという気持ちだけが残り、今日も磯へエントリーすることにした。

前半・・。

まずは、1番入ってみたかったフィールドへエントリー・・。

準備をしていると、知らない磯ヒラ師が入ろうとしてはいたものの、僕を見つけて躊躇した後に引き返そうとしていた。

咄嗟に、背中を向けている磯ヒラ師に「後を追う形になると思いますが、どうぞ先に入って下さい・・。」と、声を掛けている自分がいた。

ただでさえ、満潮で入れる場所が制限されている状況だと理解しているのに、何故にライバルとなる磯ヒラ師に声を掛けたのか、何より先行の権利すらも譲ろうとしたのか、今となっては分からない。

もしかすると、久しく見なかった福岡の磯ヒラ師に親近感や自分に似た既視感を憶えたのかもしれない。

ここから、少しだけ釣り談義することとなり、僕が声を掛けた御方はフェアプレー精神に溢れた地元の磯ヒラ師だということが分かり、「一緒に釣りしましょう!」という展開に発展し、さらに軽めのガイドまでしてもらうこととなり、午前中にエントリーすることとなった3つのフィールドは、この御方とのセッションとなる。

そんな1箇所目・・。

満潮ということもあって、ランガン出来るフィールドはかなり狭いが、近所の方曰く「ここしかない!」という立ち位置に一緒に入りスタートフィッシング。

ここでは、立ち位置の先端を勧められたが、地元の磯ヒラ師さんがどんな感じでアプローチしていくのか学習したかったところもあって、後ろを希望して後発することにした。

先発はコモモⅡをチョイスし、近距離射程内のサラシの中を探るも反応は得られず。

続いて、サスケ140裂波を使ってコモモⅡよりもレンジを入れて中距離射程内のシモリとサラシが交じるピンを狙いつつ、コモモⅡでは水面を滑るだけだと思えて投げなかったダウンorダウンストリームとなるような方向のサラシを通してみても反応なし・・。

ということで、サスケ140裂波の射程圏外だった遠距離の小磯の裏のサラシを狙うべくトライデント130Sをチョイスして、良い感じのラインコースで沖のサラシを通してみるも反応なし・・。

移動するべきだな・・。

そんなことを考えながら、このまま、手前のサラシまで引いてみようと思って、スローリトリーブのままサラシの消えたシモリの上を通していたところに水面爆発!

アワセを入れた1秒後にはスッっとテンションが抜けてバラシてしまう。

久しぶりの魚からの反応・・。

今日はもしかしたら・・。

トライデントからサイズを落として弾丸ソバット80を選択し、ソバットの第1投を撃つべく波待ちしていたところで、近所の方が「ダメですね・・次行きましょう!」と声を掛けられたので、アプローチせずに場所移動。

2箇所目のフィールドに入る。

僕にとって初フィールド・・。

こちらも動きやすい先端を勧められたが、後ろの立ち位置を選択。

ここでの先発はサスケ140裂波・・。

近距離射程内の磯際の払い出しのサラシを狙って第1投・・。

本当はコモモSF125といったシャローランナー系を選びたかったが、尽く青物にやられてしまって持ち合わせがなかったこともあって、サスケを潜らせないように心掛けてアプローチ。

リトリーブでレンジが入ればデッドスローに変えてサブサーフェスまでゆっくりと浮かせる・・。

そんなイメージで、シャローランナーのレンジになるように、ヨタヨタとした浮遊感とスローなアクションで磯ギワをなぞっていると、白銀の魚体がモワッとボトムから出現して裂波を掻っ攫い反転ヒットに持ち込む。

久々のファイトではあったが、ハーモニカ喰いのような感じで針掛かりしていたこともあって落ち着いてランディングに成功し、久々にヒラスズキのキャッチに成功する。

久々の焦がれていた魚は、60cm前後のヒラスズキだった。

喰ってきてくれて本当にありがとう。

久々過ぎて、ルアーと魚の全体を画角に入れた撮影が出来なかったり、アクションカメラをONにしていたつもりがOFFになっていたことが悔やまれる・・。

余談ではあるが、この1キャッチ以降、ヒットルアーであるサスケ140裂波に異変が生じ、レンジが本来のゾーンにまで入りにくくなった。

よく見ると、重心移動を司っているボール球の最後尾の玉が固定され、デフォルトの位置まで戻らなくなっている。

これにより、アクションは裂波そのものではあるものの、レンジがコモモSF125と同じようなゾーンにしか入らなくなり、仮称・・サスケ140裂波(shallow)となってしまったが、後にこれが起爆剤となる・・。

続いて、同じ立ち位置からサスケ140裂波を続投のまま、先程ヒラスズキからの反応のあった右のサラシをアプローチするも反応がなかったので、左の断崖と小磯に阻まれるように溜まっているサラシの中をアプローチするも不発・・。

サイズを変えてみようと思い、先程チョイスしたもののキャストしなかった弾丸ソバット80を選び、サラシの溜まり場の奥から入れてみたところ、ショートバイト・・。

2投目は少し狙う位置を変えて断崖寄りにキャストして断崖のキワをトレースしたところ再びショートバイト・・。

もう少し、アプローチしたかったところではあるが、地元の方が引き返して来たので2箇所目はこれにて終了し、3箇所目のフィールドへ向かうこととなる。

地元の方と釣り談義をしながら、このエリア周辺のヒラスズキ情報なんかを貰いつつ、同じ分量と思えるような相手が持ち合わせていないであろう情報を渡す。

お互いにイージーな展開よりも真冬の1本出るか出ないかの釣りの方が面白いよねって話をしながら、僕自身は厳冬期でヒラスズキを出せていない訳ではあるが、同じような価値観を持っている人と釣り談義が出来て、さらにはベテランの磯ヒラ師さんだけあって、通い慣れたことで培った経験や知恵なんかを感じ取ることが出来て、少しでも自分の血肉になってくれたら・・と切に願う。

3箇所目のフィールドへ到着・・。

ここでも、地元の方が先行ランガンしやすいように前の立ち位置に入ってもらい、自分は後手の立ち位置に入り、その第1投のサスケ140裂波(shallow)が爆ぜる。

サイズは45cm前後のヒラスズキではあるが、このサイズが居る・・ということは、数が出る・・という経験則があって、同じラインコースではさすがに反応は皆無ではあるが、別のピンに投げると反応があって、このフィールドではサスケ140裂波(shallow)にて3キャッチ。

改めてではあるが、ヒラスズキの神経質な臆病さと手前から狙っていくアプローチの大切さが伝わる・・。

もし、自分が手前からのアプローチではなく沖からのアプローチをしていたのなら、3尾もとれなかっただろう。

もちろん、僕が3尾キャッチできているのなら、上手な人なら波をしっかり待って手前から攻めて5尾以上は釣っているだろう・・。

ここで、正午を越えて3フィールド目が終了、地元の磯ヒラ師さんと別れソロで後半を迎える。

後半・・。

地元の方と別れ、後半は前半で無双していたサスケ140裂波(shallow)は封印する縛りで後半戦スタート。

そんな後半1箇所目のフィールドの先発はブローウィン125Fスリム

あくまでも前半の傾向であって、後半どうなるのか分からないところではあるが、前半は1度でもそのピンから反応があれば二度とヒラスズキからの反応がないような状況。

残り時間も2時間ほどしかないことも重なって、1ルアー2〜3投して反応が無ければ、次の立ち位置へ移動する・・という足で稼ぐ作戦で勧めていく・・。

ブローウィンを続投させながら、3箇所目くらい移動してのこと・・、サスケ140裂波(shallow)での喰わせ方の残像が残っていて、ストップ&ゴーを多様しながらフラつきを演出させながら探っているとショートバイトがあって、そのまま回収せずにヨタヨタさせていると、足元でボシュ!っと磯のキワで出てきた・・。

こちらも、45cm前後のヒラスズキ・・。

ということは、まだ居る・・ということで、ランガンしながら同じようなメソッドでブローウィン125Fスリムを操作していると、再び同じサイズのヒラスズキをキャッチ・・。

ここから、ブローウィン125Fスリムも封印することにして、以前・・F君が見つけて購入してくれたフローティングペンシルのクー190Fを使って、新たなメソッドの習得に務めることにする。

クーのキャッチフレーズは、アンダー10cmをじっくり攻める!沈まない、浮くペンシル!・・という、シンキングペンシルとは真逆のペンシル・・。

フローティングペンシルは過去にバレーヌ125F(アピア)を使ったことがあるので、その応用でなんとかなるのかな・・とも思いつつ、アンダー10cmというところが、磯のサラシで引けるのか・・という懸念もあったので、デフォルトでMH#3のフックが搭載されているが、Hの#2番に変更し、微々たるものではあるが浮きにくくすることにした。

また、友人KやF君がやってるような鉛シールを貼る・・現地でカスタムする工夫にまでは至ってはいないが、今回の泳ぎ方次第では着手したいとも考えている・・。

そんな後半2箇所目・・。

クー190Fを続投のまま、足場適正やアップ・ダウン適正の確認をしつつ、脳内イメージの補正をしながら、2〜3箇所ほどの小場所をダメにして、このフィールドの最終地点にやってきた・・。

だいたいの使い方が分かったので、そろそろ・・。

クーの背中が海面に触れないようなリトリーブを心掛けながら、立ち位置から左から右に払い出す流れに負けてスライドさせながらアクションしているのかさえ分からない感じで、クーの位置を見失いながらもリールとロッドから伝わる重さを頼りにアプローチしていたところ、バシュっと小規模に海面が炸裂した後で、ごん太の黒い尾びれが反転していくのが見えた。

大型ヒラスズキを狙うために、大型のルアーを選んだが、まさか・・本当に大型が出るとは思わなかったし、磯の表のサラシ側で喰ってくるとは思わなかった・・。

ヒラスズキの頭を強引にコチラ側へ向けて、ヒラスズキと自分の間にある磯を躱す必要があったが、コチラの思惑を理解した上で阻止されているように潜られ、そのままの勢いで磯にラインが擦ってラインブレイク・・。

その帰りに、入っていなかった立ち位置に入って、弾丸ソバット80で小型のヒラスズキをキャッチ・・。

後半戦が終了した。

今回の推し!

今回の釣行では、いろんなルアーでヒラスズキからの反応を得ることが出来たが、その中でも弾丸ソバット80というルアーを推してみようと思う。

そもそもの話ではあるが、弾丸ソバット80はシーバスルアーとして優秀なソバット80というシンキングミノーの派生系・・ソバット80のフォルムそのままにヘビーシンキング化(7g増)されたルアーであるが、問題はどうやって入手するのか・・というところ。

今となっては通常生産から外れ復刻限定生産(アイマさんには時々、そんな感じで廃盤になったルアーが限定生産で復刻されることがある。)となっている。

通常ソバットと弾丸ソバットの見分け方としては、目の色を見てもらったら良いのだが、白地のアイシールであれば通常ソバット、下の写真のように青字のアイシールであれば弾丸ソバットと見分けることができる。

弾丸ソバット80

ちなみに、僕が本当に推したいのは弾丸の方ではなく通常の方(シーバスをやるのなら、是非とも使って頂きたい)なのだが・・それは何れ湾内シーバスを絡めてインプレッションするとして・・。

弾丸ソバットのスペックにあってはコチラ・・。

弾丸ソバット80のスペック
  • メーカー  :アイマ
  • 全長    :80mm
  • 重量    : 20g
  • タイプ   :シンキング
  • レンジ   :80〜150cm
  • アクション :タイトスラローム
  • フック   :6番
  • リング   :3番

飛距離にあっては、もちろん通常ソバットよりも飛びますが、同サイズ同ウエイトのぶっ飛び系シンペンと比べると若干見劣りする。

レンジにあっては、公式ではスペック表のとおりとなっているが、自分はこれを20〜50cmをキープするように使っている。

このルアーの良さとしては、小粒感とレンジキープ力だろうか・・。ダウンでもレンジをキープしながらアプローチできるシンペンはそこまでないと思え、ある意味、唯一無二なルアーなのかもしれない・・。

ちなみに、この弾丸ソバット80は限定復刻のため、次の復刻は未定・・。

一応、リンクだけは貼っておくことにする。

まとめ

今回の釣行では、ショートバイトや誤爆を除きバイト中キャッチバラシラインブレイクと、ヒラスズキからの反応が多くあって、あくまでもこの場所に限定されるのかもしれないが、確実に厳冬期を過ぎてしまったようだ・・。

これにより、銀ピカのイケメンヒラスズキ達に久しぶりに逢えたことや、釣れなさ過ぎてアプローチが下手になっていないか不安ではあったが、昨シーズンの今頃の自分よりは確実にマシだと思えて安心した。

ただ、厳冬期というエクストラハードな状況でヒラスズキを1尾すらキャッチ出来ずにシーズンを終えたことが悔しく、もっと磯に入ってやり込みたかった・・と後悔している。

そして何より、これで・・この記事で悶々と自分の精神と向き合い、その輪郭の言語化に挑み綴るだけの純文学的スタイルを終えることができると思うと、これはこれで安堵である・・(笑)。

これで、お堅い文章を書かなくて済む(笑)。

猫と魚

もう春なのか・・。

あっという間の厳冬期だった・・。

春といっても、海の中はそれほどでもなく、ヒラスズキ達はこんな小さなベイトを捕食していて、痩せてはいないもののグラマラスなヒラスズキが釣れなかったところを鑑みるに、ベイトは入っていないのだろう・・。

ヒラスズキが吐き出したベイト

これにより、まだまだ春とは言い難い海況ではあるが、それでもヒラスズキ達がシャローに差し込んでいて、海水温がそれなりに上がったことが覗える釣行となった。

そして、それなりの数の反応を得られたが、このようなベイトを捕食していることを推察するに、決してヒラスズキの活性が高かったとは言い難い状況で、人よりも歩いたことが結果として現れたのではないか・・と感じているところで、改めて先人達が「ヒラスズキを釣りたくば足で稼げ」と言う意味が分かる気がした。

まだまだ、福岡においては水温は14度を下回るような低いフィールドもたくさんあり、福岡全体が春・・もしくは開幕・・と断言するには時期尚早ではあるが、本当にヒラスズキに逢えて良かった・・。

ここ直近のヒラスズキ釣行では、そのようなフィールドに入って、開幕の時期なんかを探ってみようと思う。

それでは、また今度・・。